幸運な男の子
セイン
バガヴァーン・シュリー・ラマナ・マハルシは、偉大な聖者としてみなに良く知られています。しかし、ほんのわずかの人しか彼の博愛と人類愛について知りません。さらに少ないのは、彼の父親や母親のような愛情を経験した者です。それらすべての人の中で、一人の少年だけがバガヴァーンと共に眠り、父親がするような扱いを楽しむ大変に羨ましい機会を得ました。彼はそのまたとない栄誉を得た唯一無二の人です。
これは1920年のことでした。バガヴァーンはヴィルーパークシャ洞窟からスカンダーシュラムへ行き、信奉者の小集団が彼の周りに集まっていました。聖者の偉大さは全世界に響き渡っていました。信奉者らは、インドのあらゆる場所から彼のダルシャンを求めて来ていました。男性は山の上のアーシュラムで一日中バガヴァーンと共にいる特権を楽しみましたが、女性は日没後はそこに留まることを許されていませんでした。
マハルシには弟と妹がいて、彼の兄はあまりに早く亡くなっています。ティルヴェンガドゥ寺院で事務員として働いていた弟のシュリー・ナーガスンダラム・アイヤルには、小さな息子がいました。シュリー・ラマナーシュラマムには幸運なことに、そして彼の家族には不運なことに、面倒を見てもらえない2歳の男の子を残して彼の妻が亡くなった時、彼はサンニャーサ(隠遁期)に入りました。両親がこの子供を孤児として残した時、一般的に「アッタイ(叔母)」として知られているマハルシの妹は子供の世話を引き受け、惜しみない愛情と気遣いで彼を育てました。それは彼女自身に子供がいないからだけでなく、この男の子が一家全体の唯一の子孫でもあったからです。この子は遠くの南部に住んでいたアッタイと彼女の夫によって、バガヴァーンと(プールヴァーシュラマの)父親-今後、彼はシュリー・ニランジャナーナンダ・スワーミーとして知られますが-に会うために年に二度三度、ティルヴァンナーマライへ連れて行かれました。彼らにはティルヴァンナーマライの山の近くに家を提供されていました。毎朝、アッタイは山を登り、夕方に街へ帰り、スカンダーシュラムに男の子を残しました。
最初、大変に愛している男の子にどんな不便でも起こるのを恐れ、アッタイがそうするのをためらっていた時、バガヴァーンは「私が見守っているから大丈夫ですよ」と言いました。
夜に男の子はバガヴァーンの聖なる手から食べ、バガヴァーンは彼をそばに寝かせ、毛布でくるみ、あやして彼を寝かしつけました。彼は誠実な母親がなしうるあらゆる気遣いを彼に注ぎました。朝早く、彼は男の子を泉に連れて行き、粉で彼の歯を磨き、彼の顔を洗いました。朝にアッタイは駆け登ってきたものでした。バガヴァーンは子供と共に地下水路の上に座り、子供に「あなたのアッタイが来ましたよ。あなたに会いに彼女がどんなに急いで走ってくるのかごらん」と言ったものでした。彼女が現れるとすぐ、バガヴァーンは「あなたの男の子を連れて行きなさい。ほら、彼は無事ですよ」と彼女に言いました。
男の子へのこのあふれんばかりの愛情は、マハルシが彼に厳格であることの妨げには全くなりませんでした。以下の出来事は、バガヴァーンが男の子に今に至るまで彼が忘れていない実際的な教訓を与えたことを明らかにします。
スカンダーシュラムで、ノンディと名付けられた猿が住んでおり、みんなのペット(お気に入り)でした。マハルシは、彼の信奉者らに与えられる食事は何であれその猿にも与えられるべきで、猿がどこかに行っていない時、帰ってきた時のために猿の分を別にとっておくべきであると命じていました。そのような場合には、食べ物は洞窟の内の窓のそばに置かれ、よろい戸は閉まっていましたが、掛け金で締められていませんでした。これが習慣でした。
彼のアーシュラムへの定期訪問の中の一回のある日、男の子は信奉者らに振る舞われたお菓子をおいしそうに食べました。彼はいつもの分よりも少し多く食べました。猿は不在で、その分け前は閉じられた窓の近くに置かれていました。男の子は自分の分を食べ、窓へ行き、猿の分からも食べ始めました。突然、猿が来て、窓を開け、男の子がその分け前を食べているのを見ることになりました。それによって男の子は頬に一撃を加えられました。びっくりして怖くなり、男の子は泣き叫び、信奉者たちは彼を慰めようとしました。バガヴァーンがその場に現われ、状況を理解し、「あなたはそれを受けるに値します。なぜ彼(猿)の分を欲しがったのですか。あなたはもう十分に食べていました。あなたはそれで満足するべきだったのです」と男の子に言いました。愛する子供をなだめるどころか、バガヴァーンは彼を正しました。子供は静かになり、バガヴァーンの言葉を心に留めました。
「他人の所有物に手をつけないように。あなたの持っているもので満足しなさい。あなたの持っているものを平等に分け合いなさい。あなたの周りにいる全ての人と分け合いなさい。貧しい人を助けなさい。悪事があなたの前で行われた時、気づかないでいないように。できるならそれを正しなさい、もしくは、少なくとも正義のためにはっきり言いなさい」。これらはあの日、少年がマハルシの言葉から理解できた貴重な真理のいくつかです。
その幸運な男の子は、スワーミー・ラマナナンダ(シュリー・T.N.ヴェンカタラーマン、シュリー・ラマナーシュラマムの前会長、マハルシの家系の唯一の子孫)です。
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