第8章 南インドの精神的指導者と共に
マドラスへと我々を連れ行く道の終わりに到着する前に、誰かが私のそばに近づいた。私は顔を向けた。私に歯を見せる堂々とした笑い顔で報いたのは、黄色いローブをまとったヨーギ、彼だったからだ。彼の口はほとんど耳から耳まで広がり、彼の目はしわが寄って狭い隙間となっている。
「私と話をしたいのでしょうか」と私は尋ねた。
「ええ、そうです」と良いアクセントの英語で彼はすぐに答えた。「あなたが私たちの国で何をしているのか伺ってもよろしいでしょうか」。私は彼のこの詮索好きな様子にとまどい、あいまいな答えをしようと決めた。
「あぁ!ただ旅してまわっているだけですよ。」
「あなたは私たちの聖者に興味があるのではと思うのですが。」
「ええ-少し。」
「私はヨーギです」と彼は私に知らせた。
彼は私が今まで見た中で最も屈強そうなヨーギだった。
「どれぐらいヨーギでいるのですか。」
「三年です。」
「うーん、こう言っては何ですが、あなたは全然やつれていないようですね!」
彼は誇らしげに身を正し、気をつけの姿勢で立った。彼は素足だったので、彼のかかとのコツンという音を当然のことと思った。
「7年間、私は王‐皇帝陛下の兵士でした!」と彼は声をあげました。
「どうりで!」
「そうです。私はメソポタミアの戦いの間、インド軍の兵士に所属していました。戦争の後、私は知的に秀でていたため、軍の会計課で働きました!」
私は彼自身へのこの頼まれてもいない賛辞の言葉に苦笑した。
「私は家族の問題のために軍を辞め、大変苦しい時期を過ごしました。それが私に聖なる道に専念する気にさせ、ヨーギとなっています。」
私は彼に名刺を手渡した。
「名前を交換しませんか」と私は提案した。
「私の個人名はスブラマンヤで、私のカースト名はアイヤルです」と彼はすぐに名乗った。
「では、スブラマンヤさん、私はあなたが沈黙の賢者の家でささやき述べたことの説明を待っているのですが。」
「私もあなたに説明する時を今まで待ち続けていたんです!あなたの疑問を私の師へ持って行きなさい。なぜなら、彼はインドでもっとも賢明な人であり、ヨーギさえよりも賢明だからです。」
「では、あなたはインド全土をくまなく旅行したのですか。そのような発言ができるということは、あなたは優れたヨーギ全員に会ったのでしょうか。」
「私は彼らの内の数人に会いました。私はこの国をケープ・コモリンからヒマラヤまで知っています。」
「なるほど。」
「私は彼のような人に会ったことがありません。彼は偉大な人物です。それで、私はあなたに彼に会って欲しいのです。」
「どうしてですか。」
「彼が私をあなたのもとへ導いたからです!あなたをインドに引き寄せたのは、彼の力です!」
この大げさな発言は私にはあまりにも誇張したものに感じられ、私は彼から身を引き始めた。私はいつも感情的な人々の美辞麗句の誇張した表現を恐れていて、黄色のローブをまとったヨーギがとても感情的であるのは明らかだった。彼の声、仕草、風采、雰囲気は明らかにそれを示している。
「私には分かりません」が私の冷やかな答えだった。
彼はさらなる説明を始めた。
「8か月前、私は彼を知るようになりました。5か月間、私は彼と共にいることを許され、その後、私は再び旅に送り出されました。私はあなたが彼のような別の人に会いそうだとは思いません。彼の精神的恩恵は大変に偉大なため、彼はあなたの口に出さない思いに答えるでしょう。彼の崇高な精神的段階を理解するために、あなたは少しの間、彼と共にいさえすればいいのです。」
「本当に彼は私の訪問を歓迎するのでしょうか。」
「あぁ、そうです!もちろんです。私をあなたのもとへ寄こしたのは、彼の導きです。」
「彼はどこに住んでいますか。」
「アルナーチャラ-聖なるかがり火の山に。」
「では、それはどこにありますか。」
「さらに南方にある北アルコット地方に。私があなたの案内人を買って出ましょう。私にあなたをそこへ連れて行かせてください。私の師はあなたの疑問を解決し、あなたの問題を取り除くでしょう。なぜなら、彼は最高の真理を知っているからです。」
「それはとても興味深く聞こえますが」と私はしぶしぶ認めた。「でも、その訪問が今のところ不可能であることを残念に思います。私のトランクは荷造りされ、私はすぐに北東部へ出発します。守らなければならない二つの重要な約束がありますからね。」
「しかし、これはもっと重要です。」
「残念です。私たちは会うのが遅すぎました。私の支度は終わり、容易に変更することはできません。私は後で南部に戻るかもしれませんが、私たちは差し当たりこの旅を取り止めなければなりません。」
そのヨーギは明らかにがっかりした。
「あなたは好機を逃そうとしています。それに」
私は無用な議論を予感し、彼の言葉を遮った。
「私はもうあなたと別れなければなりません。とにかく、ありがとう。」
「私はあなたの拒絶を受け入れることを拒否します」と彼は頑固に言い放った。
「明日の午後、あなたのもとを訪れましょう。その時、あなたが心変わりしたということを聞きたいと思います。」
我々の会話は唐突に終了した。私は強健な、引きしまった、黄色いローブをまとった彼の姿が道の向こう側へ歩き出すのをじっと見ていた。
私が家に着いた時、判断を誤ったということもありうると感じ始めた。もし師が弟子の主張の半分の価値があるなら、半島の南端への面倒な旅に彼は値する。しかし、私はいくぶん熱狂的な信奉者たちに疲れていた。彼らは師らの賛歌を歌うが、師らは西洋のより批判的な基準には残念ながら達していないということが調べてみると分かる。さらに、眠れない夜々と蒸し暑い日々は私の神経を本来よりも落ち着きのないものにしていた。それゆえ、旅が無駄な努力となるやもしれない可能性は、本来よりも大きく立ちはだかった。
それでも、議論は意見を変えることに失敗した。奇妙な直観が、彼の師への独特の主張をヨーギが熱心に強調したことには何らかの本物の根拠があるかもしれないと私に警告していた。私は自分への失望感を遠ざけることが出来なかった。
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