2015年11月8日日曜日

種族を超えた愛の光景を目撃した、T.R.A.ナーラーヤナ の思い出

◇「山の道(Mountain Path)」、1975年4月 p98~100

どのようにして私はマハルシのもとへ行ったのか

T.R.A.ナーラーヤナ

 その年は1948年でした。

 私は当時、39歳でした。私は妻と四人の子供と共にマドラスに住んでしました。私はイギリスの大会社の支店長であり、幸せな環境にいたので、宗教的修練、または、靈的探求の必要性を何ら見出しませんでした。私は人生の望ましい物事を楽しむことに満足していました。

 私の部下の視察員の一人、シュリー・パールタサーラティと共に、私は小さな町々を旅していました。それは4月のある暑い日でした。シュリー・パールタサーラティと私はティルヴァンナーマライに行くためにヴィルップラムで列車に乗り込もうとしていた時、25歳ぐらいの若者が隣のドアを通って一等客車に入ろうとしていることに我々は気づきました。その人はとても太っていたため、あの手この手でそのかさばる体を持ち上げ、その一方で、明らかに彼の召使いであるプラットホームのもう一人の人がドアの向こうへと彼を押し込んでいました。シュリー・パールタサーラティと私自身を含め、プラットホームにいる人々が彼の苦境をじっと見る詮索好きな様子を彼は恥ずかしがってもいました。彼は何とか乗り込み、我々の隣の小部屋を占拠しました。

 列車が数分走った時、その人が我々の客室にやって来て、ラティラル・プレームチャンド・シャーと自己紹介し、話し始めました。 

 シュリー・ラティラルはサウラーシュトラ・ヴァイシャであり、ゴンダルで生まれ育ち、その土地の裕福な商人である父の一人息子でした。彼は6年前に結婚していました。10歳から体の中のあまりに多くの脂肪に悩まされ、今や25歳の彼は肉と苦しみの巨大な塊でした。脂肪を取り除いて、男らしくなりたいと、どれほど彼は望んだことでしょうか!

 3月の最後の週、シュリー・ラティラルは夜眠っている間にあるヴィジョンを得ました。彼は苦行者が微笑み、彼に手招きしているのを見ました。その微笑みと手招きは長い間続き、シュリー・ラティラルが目覚めた時、彼の心の目の前にはっきりとしたままでした。彼はそのヴィジョンについて誰にも話しませんでした。二日後、彼の妻はグジャラート語の雑誌を読んでいました。彼女の肩越しに見て、彼はヴィジョンの中で見た苦行者の写真を見ました。彼はその苦行者がバガヴァーン・シュリー・ラマナ・マハルシであると知るようになりました。彼はすぐさま父親のもとへ行き、信頼できる一家の召使いを伴ってのティルヴァンナーマライへの旅の手配をしました。バガヴァーンについて彼が知っていたこと全ては、グジャラート語の記事に載っていたことでした。それでも、彼は、バガヴァーンのもとへたどり着くや否や自分の苦しみは終わるだろうと確信していました。バガヴァーンのヴィジョンの微笑みと手招きは、彼にそのような確固とした確信を与えていました。

 シュリー・パールタサーラティはバガヴァーンのダルシャンを何回も得ており、彼に関する文献も相当読んでいました。丸々二時間の旅の間、彼とシュリー・ラティラルはバガヴァーンについて話しました。私は英語の小説を読んでいるという体(てい)でしたが、彼らの会話を興味深く、注意して聞いていました。

 ティルヴァンナーマライ駅で、シュリー・ラティラルは父親が彼が共に滞在するために手配した地元の商人に迎え入れられました。シュリー・パールタサーラティと私は、旅行者用のバンガローに向かいました。

 我々が入浴し、昼食をとった時、4時でした。シュリー・パールタサーラティは私がとてもビジネスライクであり、一分も無駄にはしないことを知っていました。市場を視察できますが、と彼は私に言いました。彼は私の返答にとても驚きました。「いいえ、パルタサラティー!最初にマハルシのダルシャンを得に行きます。その後、時間が許せば、寺院に行きます。仕事は後にしましょう!」

 シュリー・パールタサーラティと私がアーシュラムに入った時、5時ごろでした。バガヴァーンの母のサマーディの周りを歩き、我々はそのそばのベランダにやって来ました。50人ぐらいの人々がそこに座っていて、シュリー・ラティラルと彼のホストと彼の召使いも含まれていました。バガヴァーンは、いつものようには寝椅子にいませんでした。訪問者たちはひそひそ声で話し、彼がどこにいるのか見つけ出そうとしていました。

 十分ほど待って、バガヴァーンが彼の座に来ていないことを知った後、シュリー・パールタサーラティは合間にゴーシャラ(牛舎)や他の場所を見て回ってはどうかと私に提案しました。

 視察を終え、我々が別の側を通ってベランダに戻ろうとした時、我々は子供のような声を聞きました。「チェー、アサッテ(こら、お前というやつは!)」。我々の周りに子供は見当たりらず、そのため、その声の源を見つけ出そうとのぞきました。ベランダ近くの家庭菜園の中のナスの葉っぱ、女性の指、そして、他の植物の間の動きに我々は目をとめました。さらにじっと見ると、小さなヤギと小さなサルとリス-そして、バガヴァーン・ラマナ・マハルシが見えました!バガヴァーンはお尻をついて座り、その足は組まれて胸まで上がっていました。ヤギは彼の膝の間に身をすり寄せ、サルは頭を彼の右ひざにもたれさせ、リスは彼の左ひざに腰かけていました。左の手のひらに紙の小箱を持ち、バガヴァーンは右手の指で一つずつそこからピーナッツを取り出し、ヤギ、サル、リス、そして、彼自身に順に与えていました。彼の発言は、リスの唇の間に彼が置こうとしていたナッツをひったくろうとしたサルに向けられたようでした。我々がじっと見る間、四人の仲間は食べることを楽しみ続けていました。四人全員が等しく幸せなように見えました。彼らが互いを見つめ、一緒に離れずにいた様子はとても感動的でした。ヤギとサルとリスとバガヴァーンは、明らかにその種の違いを忘れていました!そして、我々も眺めながら、彼らの姿形の違いにもかかわらず、四人全員をただの親友として見ました。言葉では、それを見て、私の存在を通り抜けた感情を描くことはできません。稲妻の閃光のごとく超越的なるもののビジョンが現れ、存在、意識、至福、サット‐チット‐アーナンダの本質を私に示現しました。

 ナッツはなくなりました。バガヴァーンは紙を投げ捨て、年寄りが孫に話しかけるのとちょうど同じように、「ポンコダ!(みんな、行きなさい!)」と言いました。ヤギとサルとリスは去りました。バガヴァーンは立ち上がろうとしました。シュリー・パールタサーラティと私は急いで立ち去り、神聖なるものに立ち入ったことに罪の意識を感じましたが、-後悔はしませんでした。

 シュリー・パールタサーラティと私がベランダで再び座ったすぐ後、バガヴァーンが寝椅子にやって来ました。私は彼が我々を見たとは言えません。彼は我々に顔を向けて立ち、彼の目は、地上の何物をもはるか超えた上の何かに定められていました。その目は、その目の背後で輝いている光から物質的世界を遮断するスクリーンのようでした。時折、スクリーンの繊維を通って閃光が放たれ、その閃光は注がれた人々の目を冷まし、粗大な覆いを貫通し、彼らの内なる燈心に火をともしました。

 バガヴァーンは寝椅子の枕にもたれ、頭を左の手のひらで支えました。我々みなは座り、彼の顔を見ました。我々は座り続け、見続けました。誰も話さず、何の音も立てませんでした。しかし、その対面は重苦しい沈黙ではありませんでした。それは我々各人の最奥の存在が、バガヴァーンである至高なる意識と心通わせる生き生きとした体験でした。

 その美しさは、ヤギとサルとリスと共に親しげにピーナッツを食べるという、数分前に私が見た愚かしさの中にあるものと同じだという恐るべき気づきによって、私は呆然としました。私の心はその光景をずっと思い出していました。どのようにヤギが自分へのバガヴァーンの愛情を完全に信頼して彼の胸にすり寄ったのか。共にナッツをかむ時に、どのようにサルが嬉しそうににっこり笑い、どのようにバガヴァーンがにっこり笑い返したのか。どのようにリスがそのピンの頭のような目で夢を見ているかのようなバガヴァーンの目を見つめ、彼の鼻をその小さな左手でやさしくひっかいたのか。感覚的知覚の根底にあり、それを超えてある至高なる靈のヴィジョンは、家庭菜園のピーナッツ・パーティという控えめな光景によって味わいを添えられていました。

 バガヴァーンは寝椅子から立ち上がりました。我々はみな立ち上がりました。立ち去るべきだと暗黙の内に全員に了解されたようでした。我々は立ち去りました。私は今まで知らなかった安らぎと喜びを私の内側で感じました。他の人々の顔つきもまた、同じような様子を示していました。

 アーシュラムの門のところでシュリー・ラティラルと彼のホストと彼の召使いが牛車に乗り込むのを私は目にしました。シュリー・ラティラルの動作には新たな軽快さがありました。その若者のヴィジョンの中でのバガヴァーンの約束は、成就し始めたように見えました。

 私の人生において、あの日以来、多くのことが起こりました。私の物質的な状況は悪化しました。しかし、私の内面生活は、あの日以来、いつも、幸福でした。というのも、私はバガヴァーンのヴィジョンをとても多く得たからでした-とりわけ、私が非常に意気消沈していた時には。

 1953年、私はラージコートにいて、ロッジに一人で滞在していました。ある日、食堂にいた時、30歳ぐらいの人が私に近づいて来て、話しかけました。「私に見覚えありませんか」。「いいえ、すみません」と私は正直に返答しました。その人は続けました。「私はゴンダルのラティラルです!5年前のバガヴァーン・ラマナ・マハルシのダルシャンを覚えていませんか」。私はその人を再び見ました。彼は細く、筋張っていて、彼の顔は健康と幸福で輝いていました。私は愛情をこめて彼の手を握りました。彼は再び話しました。「シュリー・バガヴァーンは、素晴らしく完璧に彼の約束を果たしました。私を見てください。私は今や家業を経営していて、父は全く休んでいます。私には2歳になる息子がいて、1か月か2か月後、妻にもう一人子供が産まれることになっています」。

 私の心は即座にヤギとサルとリス-そして、バガヴァーン・ラマナ・マハルシに戻って来ました。バガヴァーンだけを思うことは決してできませんでした!

 長い間、そんな具合なのです。その光景はしばしば私の心の目にやって来ます。四人の友人がピーナッツ・パーティをする家庭菜園。

 そして、その美しき光景に私を導いてくれたシュリー・ラティラルとシュリー・パールタサーラティに私は感謝しています!

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