『ヨーガ・ヴァーシシュタ』からの物語-Ⅶ
ヴァーサとヴィラーサの物語
M.C.スブラマニアンによるサンスクリット語からの翻訳
ヴァーシシュタはラーマに言った:
スラグとパリガは世界の本質について語り、互いに敬意を払い、別れました。常にその心が内に向けられ、自らに定められた者は、決して悲しみに染まりません。
おお、ラーマ!このジーヴァなる去勢された若い雄牛は、数百の欲望なる縄で縛られています。彼は世俗の快楽なる牧草地でしきりに草を食べたがっています。彼は悲しみなる重荷を運び、迷妄なる濁った水たまりの中をのたうち、病と呼ばれる虫類にかまれ、欲望の縄に繋がれ、涼やかな日陰を見つけられずに、せわしなく行き来して喉が渇いています。あなたは最大限の努力をもってサンサーラなる泥沼から彼を引き上げなければなりません。よい船とまさしく同様に、おお、ラーマ、サンサーラなる大海を渡る方法もまた偉大なる方々との交際によって学ばれます。よい果実と涼やかな木陰がある賢者なる木のない山で、賢者は一日も過ごすべきではありません。富も友も、聖典も、親族も、サンサーラに沈んだ人を救うためには役立ちません。自らは知恵者(ジニャーニ)との交わり、彼による導きによってのみ、保たれます。体は丸太や土くれのごとくであるという知だけによって、人は至高なる自らを実現できます。
自らは大海原のようであり、言葉を超えています。それは何ものとも比較できません。それは何かを必要とすることもありません。それは意識の光がおぼろげであるが、しっかり見られるトゥリーヤの体験と比べられるかもしれません。それは空のように全てを包んでいる深い眠りにいくぶん似ています。
心と自我が解消されたときに生起する内なる至福は、至高なる主の本質そのものです。おお、ラーマ!それはヨーガの達成です。ある程度、それは深い眠りに似ていますが、言葉を超え、ハートの内に体験しうるのみです。全世界は無限の自らです。それは変化を被(こうむ)る心の内にあります。世界が現れなくなる時、(諸々の)主の主、動く存在と動きなき存在の自らが実現されます。その時、感覚対象物への欲望がやみます。これはまばゆく輝く自らの体験とともにやって来ます。そして、これに続いて次に、同質的な自らへの変容が起こり、それは偉大な方々でさえ心に描けません。自らは、心が心そのものによって殺害されないまで、実現できません。その時まで、世界の悲しみに終わりはないでしょう。心が消滅するとき、至高の喜びの体験が生じます。
これに関連して、古(いにしえ)の伝説、天に達するほど高く、大地をその礎にして立ち、パーターラ(地下世界)にまで広がるサヒャ山の谷間に住んでいた、ヴァーサとヴィラーサという名の二人の友の対話をあなたに話しましょう。果実がたわわになる木々を抱(いだ)く谷間の南側に位置するは、賢者アトリの大きく美しいアーシュラムであり、シッダたちは心配事を取り除くために足しげく通います。そのアーシュラムに住んでいたのは、惑星シュクラ(金星)とブリハスパティ(木星)のごとく空に輝く、二人の禁欲行者です。彼らにはヴァーサとヴィラーサという名の二人の息子がいました。彼らは献身的な夫婦のように互いを愛していました。彼らは大変に気心が合ったため、彼らの心は一つになっていたようでした。彼らの父親はほぼ時を同じくしてなくなりました。葬儀を行った後、彼らは父親を哀悼しました。その後、彼らは別れ、完全に超然とした態度で森の異なる場所に住みました。彼らの体は禁欲行のためにやせ衰え、彼らは全く無欲になりました。月日は流れ、年月が過ぎ去りました。そして、ある日、彼らは出会いました。そこで、ヴィラーサはヴァーサに尋ねました。「おお、気高き生き方なる木の果実よ!おお、この世界における我が唯一の友よ!心の安らぎを求める人々にとって神酒の大海よ!ようこそ。私と離れて以来、どのように日々を過ごしていましたか。あなたの禁欲行は実を結びましたか。あなたの心は焦燥的ではなくなりましたか。あなたの自らを実現しましたか。あなたの学びは実り多きものとなりましたか。あなたは幸福ですか」。
ヴァーサは答えました。「ようこそ、我が親愛なる友よ!幸運にも、私はあなたに、我が尊敬すべき友に会いました。我々がサンサーラの中にいる限り、どうして我々が幸福でいられますか。知識の対象が超越され、心の世界が枯れ落ち、サンサーラが渡られるまで、どうして我々が幸福でいられますか。木こりによってつる草が切り落とされるように、ハートから生じる欲望が切り落とされるまで、どうして我々が幸福でいられますか。我々が(真の)知を獲得し、平等感を養い、知恵を得るまで、どうして我々が幸福でいられますか。おお、有徳の者よ!自らを達成し、知の万能薬を得ることなければ、この悲惨なサンサーラなる病は何度も何度も我々を襲うでしょう。様々な類の悲しみの真中に落ち、生死なる強風によって打ち倒され、世界なる岩の上を転がり、人々は枯れ葉のごとく老いゆきます」。
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